PHILOSOPHY

クルマのバランスを考えたスプーン製品の理論や考え方を熱く解説します。

薄い1枚の中に、2枚潜んでいる。

ヘッドガスケットの大命題は、超高温・高圧にさらされる燃焼室の密閉性に尽きます。
また、Hondaエンジンは高回転が最大の特徴で重要なエンジンキャラクターですが、
9000回転を超える領域においては、オープンデッキ構造のシリンダー壁の微振動も見られます。
シリンダーの構造は、ピストンが摺動する内壁は鉄材であり、それをアルミの鋳物が取り囲むように
形成するかたちになっています。もとより素材の違いによる熱膨張差は避けられません。
その構造ゆえにシリンダートップ部分の端面は内と外で高さに差が生じ、高回転時のシリンダー壁の振動と相まって
ガスケットが吹き抜ける原因となっていました。ヘッドガスケットの吹き抜けは瞬時にウォーターラインに
爆発的な加圧を生じさせます。つまり、エンジンの冷却系にとって致命的なダメージとなるのです。
そこでスプーンは、高負荷での耐久性にすぐれたHondaエンジン専用のヘッドガスケットを開発しました。
厚さ25ミクロン違いの薄板素材2枚をビーム溶接で熔合し、幅6mm程度のシリンダー壁の中心に溶接ラインを
デザインしたのです。これによりシリンダー壁を有効に押さえ込む圧着力は、高温時でも常温時同様となりました。
素材はHonda純正同等品。溶接方法はYAGレーザーを使う「瞬間一体溶接法」。
これにより高いシール性と高耐久なヘッドガスケットの製造を成功させました。
ともすれば同じに見える部品でも、エンジン固有の特性や環境変化を見過ごさず、かつ深く着目し、
危機を最小限に減らすべく注力する。それがスプーンの製品づくりの姿勢なのです。

オープンデッキ構造のHondaエンジンのカットモデル。
異素材のシリンダー壁がオープン構造で鋳造されています。
シリンダー上部のヘッドはオールアルミ素材。
それらにヘッドガスケットが挟まれることで
気密性を保持しています。
シリンダー壁を拡大してみました。
内側の鉄スリーブ面にピストンが摺動し、発生した熱は
外側のアルミのシリンダー構造材に伝わり冷却されます。
シリンダー壁の鋳物内部は熱伝導率の向上を狙い、
接触面が波状形になっています。
厚さ違いのワーク溶接線はシリンダー壁の
鉄部とアルミ部分の中心ラインです。
厚さ0.47mmのインナーワーク材
厚さ0.40mmのアウターワーク材
インナーとアウターはYAG溶接され
ワンピースになります。
アッセンブルされる前段階の状態です。
YAG溶接部を拡大して撮影しました。



図面上の赤いラインは厚さ違いのワークが
挟まれた位置を示しています。
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